2019年12月26日木曜日

Cleopatra's Needle Closed

Cleopatra's Needle。

自分のNYでの音楽家としての足がかりをつけてくれた場所。
レストランであり、スポーツバーでもあり、ジャズライヴや
ジャムセッションが行われているという、冷静に考えると
変わった店ではあった。

1998年夏に、ボストンの留学生活を終えて、
NYの荒海に無謀にも飛び込んだ自分は、Cleopatra's Needleという
Upper West Sideにあったレストラン/ジャズクラブの毎晩繰り広げられていた
ジャムセッションに毎晩のように参加することで活路を見出すしかなかったのだ。
(当時、Cleopatra's Needleは、どこよりもジャムセッションがハプニングしていた。)
この場所で聞いた、Manny Duran, Philip Harper, Eric Lewisなどの音の記憶は
自分のとっての一生の糧になっている。

数年して店主から、毎週日曜のジャムセッションのホスト業を任された当時、
自分は、最高の仕事を得たと思ったものだ。
(ギャラは非常に安いものであったが、お金ではなかった。)
1時間の自分のトリオのショーをしてから、ジャムセッションのきりもりを
することにやりがいがあった。
日本人のミュージシャンも多くセッションに集まってくれて、
セッション後、彼らと深夜まで近くのダイナーでパンケーキを食べながら
くだらない話をしあうのが他にかえられない楽しみであった。
ここで出会った様々なミュージシャンから、色々な仕事の機会をいただいた。
NYで音楽家として行きていく基盤をこの場所で作れたのだと思う。


しかしながら、徐々に徐々に、自分はすり減っていったのだと思う。
店主とも意見の相違でぶつかることも増え、2010年の半ばに
首を告げられた。正直、安堵感があった。あのままでは、音楽自体が
嫌になってしまっていたかもしれなかった。
なんだかんだ10年くらい続いたセッションであった。

(今も、ジャムセッションというものに、体が拒否反応を起こしてしまう。
おそらく一生分、ジャムセッションをしたからだと思う。)


それ以来、あの店に足を運ぶ事はなかった。
私の仕事環境も変わった。子供も8歳になった。
あの店の事は遠い記憶に消えていた。


一昨日、突然、Cleopatra's Needle閉店のニュースを聞いた。
30年くらい続いた店だったらしい。
閉店の理由は私はよく知るよしもない。

Facebook上で、ミュージシャン達が、けちょんけちょんに
あの場所や店主の事を非難しているのも見た。

もちろん彼らのいう事はもっともなのだけれど、
自分には、あの場所があったから今の自分があると思っているので、
店主にはありがとう、お疲れ様でしたと伝えたい気持ちでいっぱいだ。
(もっとも、彼の連絡先はもう持っていないのだが。(笑))

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