2013年5月15日水曜日

カープールドラマ

以前、NJ州からNY州に向かう時に、
車に3人乗っていれば、カープール割り引きで
通過料が安くなる話を書いた。
http://dodotoru.blogspot.com/2011_06_01_archive.html
当時に比べて、料金は若干値上がりしたものの、
已然、一番安くNY州に行ける方法であるに違いない。

先日、昼間にマンハッタンでリハーサルがあった。
マンハッタンは、夕方6時以降は、無料で
路上駐車できるのであるが、
6時前にマンハッタンに行く時は、
車の駐車場所に苦労するので、
George Washington橋の入り口付近の
バス停まで歩き、バスに乗るか、
カープールしてNY州に入り、
地下鉄にのる方法で行く。

バス停でしばらく待っていたら、
カープールしてくれる車にありつけた。
50代後半と思われる、ヨーロッパ系の
訛りのある英語を話す女性が運転していた。
助手席に座った私。もう一人白人男性が
後部座席に乗り込み、橋を渡る。
見知らぬ人が乗り合うこのカープール、簡単な挨拶のみで、皆、押し黙っている事が
多いのだが、この女性運転手、割と、気楽な感じで
話しかけて来られる方であった。

橋を半分渡りきったあたりで、彼女は、
どこまで行くのか聞いてきた。

このカープール、このバス停から橋を渡った後、
すぐ出てくる、NYの地下鉄Atrainの駅入り口で
降ろしてもらうのが暗黙のルール。

私は、つい、調子にのって、
『East sideの66丁目あたりまで行きますけど、
もしかして、そこまで乗せていってもらえます?』

ジョークとして終わる話だと思っていたら、
『え、私もEast sideの59丁目まで行きますよ。
 よかったら乗っていきますか?』
と提案されてしまった。

見知らぬ人の車で、何があるのかわからない
危険はあると思うが、私は、
なんだか、大丈夫な気がして、
ありがたく、乗せていってもらうことにした。

(後部座席に乗られた方は、通常のAtrainの地下鉄で
降りられた。)

道中、彼女は、色々な話をされた。
彼女は、ユーゴスラヴィア出身で、
1992年からはじまった紛争を機に
幼い子供を連れて、外国に避難。
ヨーロッパを転々とした後、
14年前からアメリカに避難してきたという。
彼女の旦那さんは、祖国では、
弁護士をされていたらしいが、
アメリカに来てからは、英語も不自由で、
清掃の仕事等をして生計を立ててきたという。
旦那さんは、友人もおらず、
仕事と家の往復のみ。
子供が大学生になって、今後、
子供がどのような進路につくかわからないが、
落ち着いた所で、夫婦は、祖国に帰る
予定だという。
『この14年、ずっと、祖国の事を
思いながら、アメリカで過ごしてきた 』
と語った。

 音楽のために、アメリカに行かなくては
いけないのだ、みたいな感じで、
1995年に祖国を飛び出してしまった私との
あまりの境遇の違いに、言葉を失ってしまった。

目的地についた。
せめて地下鉄代くらいは、彼女に支払おうと
思ったが、彼女は、
『いいからいいから。よい一日を!』
と明るく挨拶された。
私は、感謝を述べて車を降りた。

 しばし、彼女の話の内容に呆然としながら
リハーサル場所に向かった次第。

3 件のコメント:

  1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  2. 心意気ですね。
    「お金はトラン!ジッと乗っておりなさい」

     ということで transit の語源になったのかもしれません。

    返信削除

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