とある高級ホテルラウンジでのGig。Vocal, Piano & Drums という編成。
バーカウンターに男性客一人。テーブルに若いカップルだけの静かな夜。
演奏終了時間が来て、片付けに入った頃、バーカウンターにいた男性が話かけてきた。
『娘の誕生日ギフトに、自分が作った歌を、演奏してくれないか? ビデオを撮って娘に送りたいんだ。』
譜面はないが、歌詞が彼の携帯に表示されてあり、彼は歌い出した。
しかし、まるでお経のようなメロディーで、とてもコードをつけられる感じではなかった。
『申し訳ないです。できません。』
彼は、彼の携帯に入っていたこの曲が演奏されてる自撮り映像を差し出し、
『$500払うからやってくれないか?』
バンドメンバーは、即Yes 対応。ビデオの演奏を聞いた限り、とても簡単なコード進行であった。
2、3回リハをして、バーテンダーにビデオを回してもらい、演奏した。Vocalistは彼の携帯の歌詞を読みながら、drummerはスネアを叩いた。私もとびきりの伴奏に努めた。
(後日、このバーテンダーからビデオを共有してもらったのだが、バンド全員、無理やり笑顔を作って歌っているのだが、どこか誘拐人質ビデオのような雰囲気。)
彼は満足したようで約束通りチップを現金で払ってくれた。
バンドメンバーは、仲良く山分けしてホテルを出て、この体験の感想談にふけった。
するとラウンジのウェイターが首を振りながら戻ってきた。
聞いたところ、若いカップルは、偽のホテルルーム番号と偽の名前を使って飲み代をすっぽかして逃げた、と。
ある人は、娘の誕生日ギフトビデオのために$500をバンドに払う。
ある人たちは、$150相当の飲み代をセーブするために夜の街に消える。
懐が温まったあるピアニストは、このエピソードをブログのネタにする。
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