2011年9月2日金曜日

Irene

先週末NYをハリケーンIreneが襲った。


NYにハリケーンが上陸する事等めったにないことなので、
警戒するように前々から散々ニュースで報道されていた。


NY市長が、ハリケーン上陸前から公共の乗り物をストップさせ、
海や川沿いの住民を強制避難させる処置を取った事、
昨年、ちょっとした嵐が来た時に、家が1日断水した事、
家の近所で3日ほど停電した事を思い出した事、
さらにNYで何十年ぶりの地震があったばかり、
これはなにかやばい兆候なのではという変な虫の予感、
以上が加わって、私は少なからずパニクった。


ハリケーン上陸3日前の夜にスーパーに買い出しに行ったら、
店内にペットボトルの水がほぼ売り切れ状態になっていた。
昨年の断水の記憶があるこの街の住人が一挙に買い出しに来たのであろう。
これがさらに自分のパニック度をあげた。


2日前には、混雑するスーパーに再び出向き、
水を大量に買いこみ、食パンを買い、
レトルート食品やカップ麺を買い、
電池を揃え、ラジオ、懐中電灯を確認し、簡易式ガスコンロを確保し、
車のガソリンを満タンにした。
ハリケーン上陸当日の土曜日は、
早々とシャワーに入ってから、
風呂場に水を張り、家中の鍋薬缶に水を貯めた。
最悪、家から避難しなくてはいけない場合の
近所の避難所の住所も確認した。
我ながら準備万端という思いだった。
電気や水が止まっても、最低3日は自力で生き延びれる自信はあった。


IreneのNY上陸は土曜の深夜から明け方という。
午後から雨足が激しくなった。
ニュースに聞き耳をたてて夕食をすませた。


夜の8時過ぎに、電話がなった。
バークリ−留学時代の同級生からである。
『Catskill(NYから車で3時間ほど北の街)での仕事の
帰りの運転中なんだけれど、もしかしたら
ブルックリンの家まで道路封鎖で帰れないかもしれない。
今晩、急で申し訳ないけど、もしかして泊めてもらってもいい?』
という。


私の家は、北方面から南下して、ニューヨークシティに
入る前の途中にあるのだ。


こんな日に仕事をしていたのか、と思ったが、
『こんな日に仕事してるのもなんなんだけど。』
と先に言われてしまった。
私の無二の友人の頼みである。
『もちろん。』
と答えた。
と答えたのではあるが、私は、この時、
自分と妻の2人が3日分のみ生存できる量しか
備えはなかった事を思ったのである。


さらに雨や風がひどくなってきた10時頃、
彼が到着した。
駐車場から家までの間を歩いただけで、すでにずぶ寝れである。
『シャワー使うかい?』
と言ってみたものの、風呂には水を張ってあるのを抜かなくてはいけないのを思った。
しかし、水を抜き、
『まだ断水してないうちに、早く!』
とせかすようにしてシャワーを使ってもらい、
その後、すぐさま水を貯めた。


11時過ぎて、一段と雨がひどくなってきた。
ニュースでは、NJ州ですでに何万世帯が停電しているといっている。
しかし、我が家はまだ停電はしていない。

翌日の朝食の事を考えた。

レトルートーカレーが6箱ある。
妻と2人で3日分の予定だった。
しかし、しかしである。
電気のあるうちにやれることだけやろうと、
ご飯を3合炊いた。


しかもこの日、竜巻警報が出ていた。
私の家は、割と高台にあるので、洪水の心配はしなかったが、
もし、竜巻が来たら、おしまいだと思っていた。
しかし、今住んでいるところは2階建てで、普段は2階で寝ているのだが、
竜巻で吹き飛ばされるのは、2階の屋根からだろうという予想をたて、
今晩は1階で寝ようと決めていた。
しかし、彼と3人で川の字になって寝れるかと自問した。
そこで彼は1階で、私と妻は2階で寝た。


窓に叩き付ける風の音に何度か目を覚ます。
寝苦しい夜。

翌朝。


風は強かったが、雨は止んだようである。
ハリケーンは北東に抜けて行ったようである。
陽もさしてきた。


ありがたいことに電気も水も使えた。


昨晩炊いた米にレトルートカレーをかけて、皆でいただいた。
なんともいえない安堵感に満ちていた。

昼過ぎ、ブルックリンエリアは、大丈夫とのニュースを確認し、
彼は無事帰宅した。


もし、仮に、電気が止まり、断水してしまった場合、
食料も水も段々と底をついていくなか、
私は彼にどのような行動を迫ったのかと思うと寒気がする。
もう15年近い交流のある親友に対して、
家に帰ってくれ、と言えるのだろうか?
なんだか極端ではあるが、どこかに漂流してしまった船上で、
最も弱った船員を皆で食べて生き延びたという話が頭をよぎった。
ハリケーンIreneに、色々と人間を試された。


このハリケーン、死傷者の数がとても少なかったものの、
NJ州自体は、なにげに被害が大きく、
もうハリケーンが過ぎ去ってからすでに4日が過ぎても停電しているところがあるし、
水かさの増した川が氾濫して、洪水で街が水没し、ハリケーンの去った後に
避難せざるを得ないエリアもあったらしい。
けっこうしゃれになっていないのだ。


電気も水も大丈夫であった我が家も、
実はハリケーンの去った翌日の朝から、2階の天井から水が漏れてきた。
見れば、天井の一部が、おそらく屋根からしみ込んだ水が入り込んだせいで、
ブヨブヨにふやけてしまって少し垂れ下がってきてしまい、
そこに2センチ程の穴が水圧で空いてしまったようで、
その穴から雨水がポトポトと落ちて来たのだ。
家のオーナーに電話してるが、4日たってもいまだに修繕の手はずがついていない。
次ぎに大雨が降ったら、天井が落ちてくる可能性を心配している。
ハリケーンIrene、なかなか手強かったのである。







(ベースのワキさん、ネタにしてしまいました。すみません。
一晩共に過ごせて思い出深い台風になりましたです。
また遊びに来てくださいませ。天気のいい日の方が助かるかもですが。。。)

5 件のコメント:

  1. 脇さん、あんな日でも仕事だったんですねー。キャンセルにならなかったってのがスゴイ。

    つるりんの住むPatersonの被害は深刻ですね。彼女は未だお家に戻れないでいます。大変です。

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  2. つるりん、ようやく帰れたようでなによりですね。

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  3. いやぁ、 脇さん、そんな日でも仕事しますか。さすが。

    返信削除
  4. はろはろ、しげぞうでございます。

    日本も台風12号タラスの影響で紀伊半島中心に
    凄い被害でした。

    わたくしの周辺は、もう治まってきました。

    天災って怖いよね。

    返信削除

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